バスタオルと垢
お袋愛用のバスタオルが見当たらない。いつもは風呂場の洗濯カゴに掛けてある。最後にオイラが確認したのは、台所の椅子に掛けてあった。どこにやったのやら、自分でもわからないのである。
そんなわけで風呂に入る度に、バスタオルがないと騒ぐのである。まぁ風呂に入るといっても、お袋の場合10日に一遍くらいであるのだが…。
こないだも風呂から上がってバスタオルがないと騒いでいた。二階のベランダまで来て、オイラに「バスタオル干してない?」と聞いてきた。ここ半年くらいはあんたが洗濯をすることはなくなったよ!と言いたいところだが、
「干してないよ」
「ホントにないかい?」
「ないよ、俺の言うことを疑っているか?」
「ウン!」
カチンッときた。
「俺のことが信じられないなら、自分で見てみろや!」
ちょっと声を荒げて言ってやった。すると
「親に対して言う言葉かね!?」
「えばってるよ!?」
なんて言いながら下へ降りて行ってしまった。ったく息子を信じないなんてよく言うわ。
風呂に関してはもうひとつある。
この夏、お袋は月に2,3回しか風呂に入っていない。それも入ったとしても頭や体は洗っていない。おそらくだがそうだと思う。
これを見事に証明した出来事が起こったのだ。
ちょっと冷えた晩にお袋が風呂に入るといって、風呂を沸かし始めた。おぉまだ風呂の淹れ方覚えているな!などと感心していた。
お袋が上がって、折角だからオイラも入るか!?と風呂に入ることにした。もう仰天であった。風呂の湯が垢でこの世のものとは思えない有様になっていた。お袋の一夏分の垢が見事に湯に溶けだしたのだ!!!湯に入っただけでこれだけ垢が落ちるなら、体にこびりついた垢はどんだけになるんだ!?
速攻で湯船の栓を抜き、湯とともに垢を綺麗サッパリ流した。あんな垢の塊は生まれてこのかた見たことがない。
近所の婆さんと話した時に、体の洗い方や頭の洗い方がわからなくなっちゃったんじゃない!?と言われた。そんなもんか?
話しは逸れるが、先日伯母さんに会った時に肌がツヤツヤで綺麗なのに驚いた。髪も薄くはなっているが、サラサラなのだ。それに引き換えウチのお袋は肌はシワクチャ、ボロボロ、髪はグチャグチャ、ボサボサ、フケだらけである。手先など真っ黒で、ただの小汚い婆さんなのだ。同い年とはとても思えない雲泥の差だ。
よくわかった。伯母さんを世話してるのは次女である。ウチはこの倅だ!この差なのだ!!息子が女親を世話することの限界が見えた。
という訳で、今週あたまに入浴のデイサービスを申し込んできた。契約は来週だ。早ければ来週の半ばから利用できることになった。
絶対に行かすからな!覚悟しておけよ、お袋!全身にこびりついている垢をすべて落としてもらうからな。
伯母さんのサラサラの髪の情報が入った。あれはヅラだった。